2005年Top5

総評

2005年は、ワーストも選びたくなるほど、ひどいのもあった。結果として選んだものを見れば順当なところかと思う。ただし、隆一郎とYの評価がかなり割れた。言われてみればそうかと思うところもあるが、これはお互いの趣味の違いだろう。Yのトップ「盲導犬」については感想をまだ書いていないくらいだ。菊田一男の「花咲く港」が入ったのは意外だった。これは戦前小沢栄太郎と上原謙で映画化されていたが、偶然BSテレビでみて、改めて面白い作品だと思った。「御前会議」については実は僕のほうは入れるかどうか迷ったが、柄の大きさでわずかに及ばなかった。また「夢・桃中軒牛衛門の」は歴史に関する興味の差が出たものと考えられる。
女優では、神野三鈴を年間4本も見ていた。それだけ舞台に出ずっぱりなのだろうが、ますます磨きがかかってきたと思う。たくさん見たこともあって一位にした。奈良岡朋子はYのトップだが、確かに久し振りに見た民芸の「火山灰地」での不在地主の役柄は舌を巻く上手さであった。七瀬なつみは入れたかったが、演出家が生かしきれていなかったので見送った。中村美貴を入れたのは、「唖」の役柄を全身で表現した演技力を評価したもの。石村実伽は「城」の体当たり演技に、富本牧子は二人芝居の忙しい「明るさ」に対して。
男優は、一致したものが一人もいなくて驚いた。Yのトップの杉山雄樹は唐ゼミの注目株である。「歌わせたい男たち」から僕は大谷亮介、Yは近藤芳正をいれているが、どちらも熱演だったことには間違いない。僕は大谷の役柄に同情して選んだもの。「屋上庭園」の山路和弘の表現力は確かに評価されてしかるべきと思う。僕は、岸田国士の戯曲が中途半端な出来と思って入れなかった。水野竜司は目立たないが「ゴンザーゴ殺し」の時に上手い上手い役者だと感じた。山口馬木也はひろいものだった。

作品

隆一郎

 
  原作:フランツ・カフカ/構成:松本修

盲導犬
 作:唐十郎/演出:中野敦之

アルトゥロ・ウイの興隆
 作:ブレヒト/演出:ハイナー・ミューラー

黙る女
 作・演出:山崎哲

夢・桃中軒牛右衛門の
  作:宮本研/演出:鈴木完一郎

花咲く港
 作:菊田一男/演出:鵜山仁

母・肝っ玉とその子供たち
 作:ブレヒト/演出:栗山民也

御前会議
 作・演出:平田オリザ

ゴンザーゴ殺し
 作:ネジャルコ・ヨルダノフ/演出:菊池准

うら騒ぎ
 作: マイケル・フレイン/演出:白井晃

女優

隆一郎

神野三鈴
 屋上庭園・動員挿話
 セパレート・テーブルズ
 上演されなかった三人姉妹
 円生と志ん生

奈良岡朋子
 火山灰地

大竹しのぶ
 母・肝っ玉とその子供たち

寺田路恵
 花咲く港

奈良岡朋子
 火山灰地第二部

七瀬なつみ
 屋上庭園/動員挿話

中村美貴
 母・肝っ玉とその子供たち

大竹しのぶ
 母・肝っ玉とその子供たち

富本牧子
 リタの教育
石村実伽
 城  冬のエチュード

松熊信子
 夢・桃中軒牛衛門の

男優

隆一郎

マルティン・ヴトケ
 アルトゥロ・ウイの興隆

杉山雄樹
 盲導犬  黒いチューリップ

山本龍二
 夢・桃中軒牛右衛門の

今井明彦
 デモクラシー  うら騒ぎ

大谷亮介
 歌わせたい男たち

綾田俊樹
 コミュニケーションズ

水野竜司
 ゴンザーゴ殺し
 芝居〜朱鷺雄の城

山路和弘
  屋上庭園/動員挿話

山口馬木也
 蜘蛛女のキス

近藤芳正
  歌わせたい男たち