2006年Top5

総評

2006年は、飛び抜けていいと思ったものはないが、5本に絞るのは難渋した。川村毅の「オトコとおとこ」は60年代から70年代の政治的に熱い時代からそこで活躍したオトコたちがいま退場していく悲哀を描いて秀逸と思った。川村の関心と僕の思いが一致したということが大きい。「ハゲレット」は何といっても鈴木聡の本のうまさが光った。「シラノ・・・」は鈴木忠志の様式美に、「ガラスの動物園」はイリーナ・ブルックの繊細な演出に一票を投じた。「エンジョイ」はYも上げているが、あの清新な手法に驚き、賛意を示したかった。他にどんなものが候補に上がったかといえば、他に「フクロウの賭け」「十二夜」「蝶のような私の郷愁」「カナリヤ」「書く女」「『衣裳』『薔薇』」である。「書く女」は僅かに期待外れだった。

Yの「評決」は、我が国にすでに陪審員制度があったという史実に基づいて書かれた物語で、こんどの裁判員制度導入に当たって教育的意味もあった。「カナリヤ」は冤罪を扱ったもので上位二つは社会的なテーマ性を評価したものか。青年座の「衣裳」「薔薇」も完成度の高い森本薫の戯曲を丁寧に情感たっぷりに描いた舞台として評価出来る。「獅子を飼う」は山崎正和初期の代表作で上質の歴史劇である。僕は千利休の切腹が納得いかなくてあげなかった。

女優は、寺島しのぶの変貌ぶりに対しては文句のないところだと思う。他については僕のほうは大いに迷った結果である。小飯塚貴世江は「東京原子核クラブ」で気を吐いた。共演の西山水木も怪演というべきがんばりだった。「黒いぬ」の新井純も菅野菜保之と二人で舞台を引っ張る活躍だった。「エンジョイ」の岩本えりは、その若さと可能性に対して。

男優は逆にたくさんいて、選択に困った。ゲッツ・アルグスは、あの声量と存在感で圧倒された。平幹二朗は久し振りに見たが、やはりうまい。歌舞伎役者以外であれだけの色気を出せるものはいないとおもった。山崎清介は、軽々とやっているように見えるがあの芸は余人もって変えがたいものと思う。近藤芳正はあまり元気がなかったが・・・。岩松了についてはあの過剰さ対して。木場勝巳は「ガラス・・・」一本ではちょっと足りないという感じ。

作品

隆一郎

オトコとオトコ  
  作; 川村毅 演出;高橋正徳

評決
 作:国弘威雄・斉藤珠緒/演出 鈴木寛一郎

ハゲレット
 作:シェイクスピア/構成;鈴木聡 演出:山田和也

カナリヤ
 作;しゅう史奈 演出:小松幸作

シラノ・ド・ベルジュラク
  作/演出:鈴木忠志

「衣裳」「薔薇」
 作:森本薫/演出:千田恵子「衣裳」須藤黄英「薔薇」

ガラスの動物園
 作:テネシー・ウイリアムズ/演出:イリーナ・ブルック

獅子を飼う
 作;山崎正和 演出:栗山民也

エンジョイ
 作/演出:岡田利規

エンジョイ
 作/演出:岡田利規

女優

隆一郎

寺島しのぶ
 書く女

島田歌穂
 飢餓海峡

小飯塚貴世江
 東京原子核クラブ

寺島しのぶ
 書く女

中嶋朋子
 ガラスの動物園

石川真希
 嗤う女

島田歌穂
 飢餓海峡

小飯塚貴世江
 東京原子核クラブ

岩本えり
 エンジョイ

小島 聖
 柔らかい服をきて

男優

隆一郎

ゲッツ・アルグス
 オイディップス王

中西和久
 破戒

平幹二朗
 獅子を飼う

坂東三津五郎
 獅子を飼う

山崎清介
 十二夜

小松幸作
 カナリヤ

近藤芳正
 ハゲレット  アジアの女

木場勝巳
 ガラスの動物園

岩松 了
 アジアの女 マテリアル・ママ

津嘉山正種
 殺陣師段平