題名:

雲のゆくえ    

観劇日:

03/6/20   

劇場:

青山劇場   

主催:

The Convoy Show    

期間:

2003年6月18日〜30日  

作:

今村ねずみ   

演出:

今村ねずみ  

美術:

堀尾幸男     

照明:

豊島信幸    

衣装:

高橋智加江    

音楽・音響:

松山典弘     

出演者:

今村ねずみ 瀬下尚人 石坂勇 右近良之 徳永邦治 館形比呂    
 

 

「雲のゆくえ」

 驚いた。何を今さらと言われそうだが、日本のショーマンシップの水準がこれほど高くなったことに感激した。チケットが取れないことは聞いていたが、実際に見るとなるほどと思う。
 

 中央線沿線の閉店が決まったバー「我楽多」に、何十年かぶりで昔の仲間が集まる。アルバイトでこの店のカウンターに入っていたがそのまま何となく経営者になってしまった矢野(今村ねずみ)、サラリーマンで夫婦仲が微妙なところを子供が支えているとい「クロ」(瀬下尚人)、何度か事業に挑戦し、今は成功して会社を持っている「とよし」(石坂勇)、通販番組にでているタレントの「なかじ」(右近良之)松田優作マニアの松田(徳永邦治)、そこへ二十年ぶりにみんなの前に現れた舞踏家の「コバ」(館形比呂)が加わり六人は思いで話に興じる。
 そして、二十何年か前のあの夏の暑い日の話になると、場面は突然時間を遡行する。
その日は彼らの仲間、源さんの誕生日を祝う準備をしながらみんなで待っていた。源さんはビルのガラス磨きの仕事をしていた。真夜中を過ぎても源さんは現れなかった。転落してなくなっていたのだ。自殺かもしれない、だとすれば何故?みんなの心に癒しがたい傷跡を残して源さんは突然消えた。
 今そのことを思い出しながら、自分達のきた道を振り返り、これからの人生をそれぞれが一生懸命生きて行こうと誓い合うのであった。
 仮面ライダー、ショッカー、赤影、大魔神などのキャラクター、太陽にほえろの松田優作などテレビで育った世代らしい話題が豊富に出てきて、知っているものには懐かしい思い出であろう。二十歳のころの仲間がこんなにもそれぞれのことを思いやり、二十年経って集まっても昔のように仲良くやれるというのは、なかなかないことと思う。テレビの話題で共通経験を確かめたり、それぞれの見えない過去を語ることで次第に青春時代の仲間意識を取り戻していくことが出来る。
 このように単純だが心温まる物語を書けるのは、今村ねずみという人の優しい性格によるのであろう。他のは見ていないが、そんな気がする。
 いや、ストーリーはともかく途切れることなく繰り出されるパフォーマンスには圧倒された。しかも二時間半たっぷり!
 モダンダンス、バレー、タップ、ビートルズナンバー、ジャズの演奏、ボーカル、和太鼓、フライパンドラム、マジックショー、ベルの演奏・・・
 六人の出演者は、どのような出自かは知らないが、踊り歌も楽器演奏も本物で、ミスを探そうと思っても見つからない。ひとりの人間がこれほど幅広い芸を身に付けられることは驚異である。
 全体の構成について言いたいこともあるが、野暮になりそうだから、それはやめておこう。
とにかく、チケットが取れたらの話だが、是非一度ごらんになることをお奨めしたい。
               

                                 (2003/6/23)

 

 


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